LT57_FRESH MATTER

Fair Enough? Absolutely.

世界で初めてフェアトレードに認定された バニラ・アブソリュートを 商品の原材料に使用するラッシュ。 私たちが見い出したフェアトレードの 真の意味とは…。

雲が晴れ、ウガンダ西部に位置するルウェンゾリ 山地がその壮大な姿を現した。まさしく「月の山 脈」と呼ぶにふさわしい。ここはナイル川の水源 であり、ラッシュにとってはフェアトレード・バニラ の新たな産地でもある。何しろバニラの生産地と して完璧な場所なのだ。山々には熱帯性植物が 生い茂り、肥沃で水分を多く含んだ大地が広が る。その上、標高が高いため、香りの強いバニ ラビーンズがゆっくりと力強く育まれる。 ルウェンゾリ山地を見下ろす絶景ポイントに建つナ ダリ農園のシャレー。そのベランダに腰掛けて、 オーナーのルル・スターディーが、1999 年に叔 父から農園を相続した時のことを語ってくれた。 当時、ナダリ農園ではコーヒーやバナナなどさま ざまな作物を栽培していたが、経営が厳しく赤 字続きだった。しかし、ルルはたった 7 年で農園 を建て直し、今では、ムブク・フェアトレード農業 協同組合のトップだ。この組合は、世界初のフェ アトレード・バニラ輸出農業協同組合の 1 つで、 1,200 軒にのぼるフェアトレード農家が所属。ど の農家も、ナダリ農園にほど近い場所に土地を 所有している。もともと、ムブク・フェアトレード農 協は地元の農家たちが互いに協力し合うために 作られたものだったが、今はナダリ農園と共に最 高級のオーガニック・フェアトレード・バニラビーン ズを栽培している。ナダリ農園にバニラビーンズ を卸しているムブク・フェアトレード農協所属の農 家たちは、誰もがバニラビーンズ栽培の研究に 熱心だ。その熱意は、フェアな報酬を支払われ ることで報われているといえる。

れることは、滅多にないんです。値段が普通の バニラの 5 倍ですからね、世界の市場では敬遠 されてしまう。でも実際のところは、フェアトレード でないバニラの価格が安すぎるんです。農家に とっては採算が取れないと思いますよ。私たち自 身も、長い間、フェアトレード価格で作物を販売 できたのは収穫量全体の2~3割程度でした。 でも今はラッシュとの契約のおかげで、少なくとも 収穫量の 7 割をフェアトレード価格で売ることが できています」。 バニラビーンズとは、ラン科バニラ属の学名「バ ニラ・プラニフォリア」の熟していない実を乾燥さ せたもの。メキシコ原産と考えられていて、ミツ バチを介して受粉し、1 輪の花につき実が 1 つ なる。しかし、ウガンダにはバニラを受粉させるよ うなミツバチがあまりいないため、小さな針を使っ て、一つひとつ人の手で受粉させている。これ はなんと、19 世紀に編み出された手法だ。 このあたりの農家はプランテーション規模が小さ く、栽培しているバニラは平均して半エ−カーに 250 株程度。また、農園の環境作りに始まり、 間引き・土の世話・手作業による受粉など、バ ニラの栽培にはたっぷりの愛情を込めて大事に 世話をする必要がある。ここ「月の山脈」では、 バニラ栽培で採算が取れるようになるまで、5 年 から 7 年はかかるといわれている。 このように、バニラ栽培には信じられないほどの 手間がかかる。だからこそ、バニラはサフランに 次いで 2 番目に高級な香辛料なのだ。

ルルは言う。「フェアトレード価格で商品を売り切

ナダリ農園の所有者ルル・スターディー

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